伝説のタコ箱企画

北海道の「小平のタコ」を知っていますか?

遡ること10年少し前。某旅雑誌で北海道のブランド漁獲地アンケートなるものがあり、認知のベスト5は1位:函館のいか 2位:鵡川のししゃも 3位:日高の昆布 4位:厚岸の牡蠣 5位:根室の花咲かにでした。

北海道の日本海側・留萌管内で皆様に知られているものといえば、21位の天塩のしじみ 25位の留萌の数の子 32位の初山別のふぐくらい。留萌管内のナンバンエビ(甘海老)、ヒラメやミズダコは全道、いや全国に誇れる産地であるにもかかわらず、世間にはまったく知られていませんでした。

しかし、ナンバンエビだ、ヒラメだ、タコだと言っても、現実的に当時の北海道12支庁の漁類水揚げ量をみると、留萌支庁はビリから2番目の11位。とても留萌の海の幸をアピールできる状況ではなかったのです。

これに危機感を覚えたのは、留萌支庁(現:留萌振興局)水産課の方々でした。

留萌はもっと有名になっていいはず!
継続的かつ安定した漁業環境であっていいはず!
留萌の海で獲れる魚介の美味しさを道内・道外の多くの方に知ってもらい、留萌の地域や人々をもっと元気にしたい!

そのためのアイデアを水産課のみんなで考えようということになりました。

しかし、様々なアイデアが提案されましたが、なかなか良い企画は出てきません。あーだ、こーだと言い合って結局はどれもボツ。そんな手詰まり感のある焦燥とした日々を送っていた時のこと。2006年の夏、ある日の昼休み。水産課のT課長の発言からすべてが動きだしたのです。

「タコ箱オーナーの企画はどうだ?」

宇宙の始まりにビッグバーンがあるように、タコ箱漁オーナーの始まりはT課長のこの一言。オロロンラインの日本海に沈む美しい夕陽のごとく、その言葉は水産課の方々の胸に大きく輝き、明日への希望になりました。

「それ面白い!」

数分もしないうちに、この企画を是が非でもすすめようということになりました。T課長以下、総勢14名。一度やると決めたら、あとは実行あるのみ。ここから伝説の企画「タコ箱漁オーナー2007」が始まり、2017年の復活、2018年、2019年の開催へとつながっていくのです。

伝説のタコ箱漁オーナーは2007年に始まった。

2007年、北海道留萌支庁(現:留萌振興局)水産課は、留萌地方の美味しい水産物PRの一環として小平町の「タコ箱漁」を知ってもらおうと、小平町臼谷のタコ漁師阿部喜三男さん協力のもと「タコ箱漁オーナー2007」を企画・実施しました。

100箱のオーナーを募集し、タコ箱一つひとつに番号を付け、1箱につき5,000円(当時の登録料)でオーナーになってもらうもの。本物のタコを使った公開抽選会で当選者を決めるなど、そのパフォーマンスも話題になり、テレビやネットのニュースで数多くとりあげられました。

当選者には登録料の振込後にオーナー登録証と登録番号が発行され、同じ番号の自分のタコ箱が決定。別途公募による企業協賛枠や自作タコ箱チャレンジ枠などを合わせた計108のタコ箱が小平町沖約8.5キロ、水深約45メートルの海底に仕掛けられました。

大反響!全国より22,460人の応募!

この企画は、タコを購入していただくものではありません。一定期間、「タコ箱に入ったタコを優先的に得られる権利」を有してもらうもので(但し、オーナー様に漁業権はありません)、漁師さんがタコ箱を引き揚げ、見事捕獲された場合に限りタコを宅配するもの。

タコまかせで、箱の中に入っていたらラッキーな漁ですので、1回の引き揚げではタコが入っていない場合が多いのです。それを前提にした募集ですので、そう応募はないだろうと水産課の面々は思っていました。ところが、2007年5月7日の朝。募集開始と同時に職場の電話が一斉に鳴り響き、回線はパンク状態に。想定外の反響に、

「まずいな、収拾がつかなくなるぞ」水産課では大慌て。急きょ、電話機2台を専用ダイヤルにしましたが、こと既に遅し。その日から2週間、朝から晩まで応募や問い合わせの電話が鳴り続け、水産課の職員は対応に追われました。

(申し訳ございませんが、「タコ箱漁オーナー2019 in おびら」のご応募はインターネットのみとさせていただきます)

結局、100箱のオーナー募集(企業協賛枠5箱・自作タコ箱チャレンジ枠3箱は別途募集)に全国より応募が殺到!最終的には20日間の応募期間で当選倍率200倍を超える、22,460人もの応募が集まりました。

小平町のタコ箱漁に、夢とロマンを抱いて。

この人気沸騰ぶりは、共同通信がいち早く情報を流してくれたおかげとか、某人気演歌歌手のコメントがスポーツ紙に載ったから広まったのだとか諸説ありますが、年末の宝くじと同じように、多くの方がこのタコ箱漁オーナーに「夢」や「ロマン」を抱いたからではないのだろうかと思います。

タコをお取り寄せする単なる購入企画なら、こんなに応募があったでしょうか。

遠い北の海を想い、海中のタコたちを想い、自分の番号のタコ箱を想い、さらに実際に入ってくれたら、改めてロマンを想い、タコや漁師さんへ感謝する。
神だのみ、タコだのみの上、自分の運や夢、感謝を想う、なんとも素敵な企画じゃありませんか。

タコ箱漁を地域おこしへつながるイベントへ。

留萌支庁としての企画は2007年の1回で終了しましたが、反響の大きさに新星マリン漁業協同組合等が中心となって2008年~2011年まで開催されました。引き続き、全国からたくさんの応募があり、この「タコ箱漁オーナー」は大ブレークしました。

企画のタコ箱漁は1~2週間おきに数回(今回は前後期各3回)にわたって船上に箱を引き揚げ、中を確認しますので、タコをゲットできるチャンスも数回あることになります。運が良ければ複数杯ゲットできますし、数回とも入っていなかった場合は残念賞を進呈しました。また船に乗って実際の漁を見学したり、その後に地元の海産物などを食材にしたバーベキューの集いも用意されるなど、いたれりつくせりの企画で、地域おこしへの足掛かりにもなりました。残念ながらタコ漁不漁のため「タコ箱漁オーナー」は惜しまれながらも2011年で終了しました。

この元祖「タコ箱漁オーナー」を2017年に復活させたのが、漁師の阿部喜三男さん(阿部漁業部)をはじめ小平町の有志たち。そして2019年の今年も開催し、「タコ箱漁オーナー」を通して、小平町を盛り上げてまいります。

皆様、ぜひご参加ください。北海道の小平町まで、遊びに来てください。食べに来てください。そして「小平のタコ」をはじめ、海や大地に育まれた格別な味覚、人の手で作られた垂涎の産物など、小平町や留萌管内には美味しいものがたくさんあることを知ってくれたら、「タコ箱漁オーナー」に関わる者すべての喜びになるでしょう。